ナポレオンが率いたフランス軍グラン・ダメルが強すぎた理由(2)砲兵のありかたを変えた一人の男の存在

フランス陸軍の砲兵を変えた一人の男

この野戦砲の改良に与かつて力あったのが、フランス陸軍の砲兵技師ジャン=バチスト・ヴァケット・グリボーヴァルでした。

グリボーヴァルは、砲身の仰角を正確に定めるためのネジ式装置と、照準器の位置を動かせるようにした新しい照準装置を採用したので、大砲を発射する前に、砲弾がどこに落ちるかが正確に予測できるようになりました。

さらにそれに加えて、砲弾と火薬を1つのパッケージに組み合わせたので、それまでのように火薬と砲弾を順々に砲口から押し込まなければならない場合に比べて発射速度がほぼ倍になりました。

最後に、グリボーヴァルは色々な標的に打ち込むための別種の砲弾を開発もしていました。

グリボーヴァルはさらに砲兵隊というものをプロフェッショナルな集団にするために、整備から発射準備までの過程をマニュアル化した上で、砲兵将校育成のための専門士官学校を設立し、マニュアルを数学的合理性に基づいて生徒たちに叩き込みました。

ナポレオンもグリボーヴァルの影響を受けている

ここまで言えばナポレオンの軍事的な天才なる神話がフランス陸軍が行ってきた構造改革というレールの上を高速列車だったことが理解できると思います。

すなわち、ヴァランス駐屯砲兵隊に士官候補生として着任したナポレオン・ボナパルトは連隊付属の砲兵学校でグリボーヴァルが編纂した砲兵マニュアルで学び、まったく新しい砲兵戦術を身につけたのです。

以上で、ナポレオンの軍事的天才を強調する『帝政史観』がアンシャン・レジームとの連続性の観点の導入でかなり相対化されたと思いますが、次はもう一方のナショナリズムを特権化する『共和国史観』はどうやろうか。実は、これもまたアンシャン・レジームからの連続性の観点で同じように相対化されうるのです。