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クリミア半島は誰のものか?クリミア半島を巡る争いの行方

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”屈辱の90年代”から“強いロシアの再建”へ

ウクライナの独立によって、クリミアをめぐる問題はロシアとウクライナ間の大きな争点となってしまい、両国の間で緊張感が走っていました。当然、この問題には現地の住民の声も大きく影響しており、約7割を占めるクリミア在住のロシア人の中から、クリミアはウクライナから分離してロシアへ帰属すべきという声が強まっていきました。


ロシア政府の議会でも、クリミア在住のロシア人の声に応えようという意見が多数派を占めていました。しかし、ロシアにとってはタイミングが悪く、同じタイミングでチェチェン紛争が始まってしまいました。独立を果たしたいチェチェンと、それを阻止したいロシアとの間で武力闘争にまで発展してしまったのです。

ロシアとしては、チェチェン戦争を通じて民族独立を弾圧しながら、一方を支持するわけにもいかず、結局、クリミア問題はしばらく棚上げされることになりました。


この期間、ソ連崩壊からプーチン大統領誕生までの約10年間をロシアでは「屈辱の90年代」と呼んでいます。国際社会ではアメリカの独壇場となり、ロシアはアメリカの行動を傍観することしかできなかったためです。


ロシアは明らかに国際的な影響力を失っていて、さらに国内でも無秩序状態に陥っていました。政治家や公共機関で汚職の蔓延、貧富の差の拡大、治安の悪化などが表面化したことで、多くのロシア市民は自由よりも、秩序と安定を求めるようになっていました。このロシア国内の無秩序状態を改善できる強い指導者を渇望したのです。


その状況の中、現れたのがKGB出身のプーチンでした。プーチンは2000年5月に大統領に就任すると、米ソ冷戦時代の「強いロシアの再建」を掲げ、チェチェンに対しては武力による徹底対決の姿勢を主張するなど、強力な指導力を発揮しました。この結果、言論・報道の自由の厳しい規制を伴いながらも、ロシアの国内秩序は急速に回復していきます。


さらに、プーチンは資源開発に力を入れ、天然ガスなどのエネルギー産業が基盤となって、経済再建も軌道に乗り出しました。

ロシアからのプレッシャーで親欧米か親露で揺れるウクライナ

一方、アメリカにとって、当然「強いロシアの再建」は歓迎するわけにはいきません。そこで、EUとNATOの加盟国は西ヨーロッパ諸国に限られていましたが、冷戦後さらにロシアの弱体化を狙って旧共産圏諸国を積極的に受け入れ、欧米側の影響力を東へと広げていきました。


東欧諸国にNATO軍の基地にアメリカの戦闘機やミサイルも配備されるので、ロシアにとってみれば、NATO軍の基地が自国にどんどん近づいてきて、そのような状況は安全保障において見過ごせないものとなっていきました。


このような状況の中で、一連のカラー革命が起きました。東欧や中央アジアなどの旧共産諸国で起こった革命によって各地で独裁的な体制が打ち破られていったのだ。


ウクライナでも2004年の大統領選挙に不正があったとして、オレンジ色をシンボルカラーとした抗議運動が起こり、やり直し選挙の結果、新欧米派のユーシチェンコ大統領が誕生した。


EUとNATOへの加盟を目指すウクライナと、それを阻んでいたロシア。両国の関係が緊張がさらに増すなか、2005年についに紛争が勃発しました。ロシア・ウクライナガス紛争と呼ばれ、ロシアとウクライナ両国間で天然ガスの供給・料金設定を巡って、両国のガス会社で争いが起こりました。


それまでロシア国営のガス会社は旧ソ連の諸国に対しては、天然ガスを通常販売価格の5分の1で輸出していましたが、ウクライナに対しては、通常販売価格と同等の値段にしようと、4倍強の値上げを通知。それに対して、ウクライナ国営のガス会社が値上げを拒絶すると、ロシア側ががガス供給を止めてしまいました。ヨーロッパ諸国でもウクライナ経由で天然ガスを輸入していたためその影響はNATO側にも大きな影響が出ました。



ウクライナに対するロシアのプレッシャーは続きます。2008年、EUとNATOへ加盟する意思を示したグルジアにロシア軍が侵攻し、ロシア人が多く居住する南オセチアを独立させたのです。南オセチア紛争です。これには同じくロシア人が多く住むクリミアを持つウクライナに対する警告の意味を込められていました。


その警告を察してか、2010年のウクライナ大統領選では親露派のヤヌコーヴィチが大統領に返り咲きます。ところが親露路線に対するウクライナ人の反発は大きく、激しい反政府デモなどもあって2014年2月、親露政権は崩れ去りました。

ロシアとウクライナの争い解決に各国の足踏みも揃わず・・・

ウクライナの大統領になったポロシェンコはユーシチェンコ政権下で外務大臣を務めた人物で、彼の大統領就任は新欧米政権の復活を意味しました。

ポロシェンコの大統領の就任で、クリミア在住のロシア人は強い危機感を覚え、ウクライナからの分離独立を求める運動が再び活発になります。今回はロシア政府もクリミア在住のロシア人を全面的な支援をしたことで、クリミアで住民投票が行われました。結果、多くの住民がウクライナからの独立とロシアへの編入を希望していたことで、クリミア半島のロシア編入が実現することになりました。


さらに、これをきっかけにクリミア半島以外にもロシア人が多く居住するウクライナ東部でも同様の動きが起こった。こちらは在住ロシア人の反政府武装勢力ウクライナ政府軍が衝突し、内戦へと発展してしまいました。さらにマレーシア航空機撃墜事件が重なったこともあってこの内戦が世界の注目を集め、アメリカ主導でロシアに対する経済制裁が科せられることになりました。


しかし、ドイツやフランスなどのEU諸国の政府はロシアへの制裁に加わりながら、本当にこれでよいのかジレンマに陥っていることが見てとれました。ドイツやフランスではすでにロシアとの密接な経済関係が作られていたことに加え、ナチス=ドイツの暴走を止められなかったことが第二次世界大戦の引き金になったという反省から、ウクライナの極右政権を支援するべきなのか、国民の中からも疑問の声が上がっていました。


国際情勢の中では、根本として領土問題というものは現地で暮らしている住民の判断が本来最優先されるべきであるとされていたためです。


しかし、このクリミア半島の問題に関しては、今やもう少数派となってしまった先住民であるクリミア・タタール人の意思はずっと無視されたまま、ロシア人とウクライナ人で領土問題が争われてきていました。そして、クリミア半島ウクライナ東部は、ロシアとウクライナ、ロシアとアメリカといった国家間の対立に巻き込まれ、争いの常に火種をくすぶらせ続けられる結果になりました。

プーチンの世界

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